タイの華僑系財閥に飲み込まれるベトナム小売市場 | TCC・CP・CENTRALの影響力

Tiger Beer_Singapore_F&N_Thai_TCC

タイ王国の企業は、自国の人口減少を前提に、隣国のベトナムをはじめとして大型のクロスボーダーM&Aを実行しています。

中でもインドネシア、フィリピン、ベトナムの3国は大幅な人口増加が確実であり、中間所得層の拡大によって有望な市場へと成長しました。

其の背景の中で、近年タイ企業のベトナム進出は加速しています。特に、ベトナムの小売市場は既に2014年にタイを抜き、20年には1,000億米ドル(約11兆円)に上るものと推測されています。

近年は特にタイの大手財閥のTCC、CP、CENTRALの3社が急速にプレゼンスを拡大しています。今回はこの3大財閥のベトナムにおける事業展開について記します。

TCC(タイ・ジャルーン・コーポレーション)

TCCはタイの華僑系の新興財閥です。歴史が長いタイ財閥の中でも比較的新しく、ビール事業で急成長を果たし一代で築かれた企業グループです。

タイのビール大手「ビア・チャーン」を筆頭に、「ゲートウェイエカマイ」など商業施設開発、「BIG C」のスーパーマーケット事業、其のほか緑茶・日本食チェーンの「オイシ(OISH)」の大衆消費財事業、保険事業等を擁しています。

「MM MEGA MARKET」(旧MERTO Cash&Carry):スーパーマーケット(会員制卸売店)

MM MEGA MARKET(旧メトロ)は、TCC社傘下のTCCランドインターナショナルが合計19店舗を展開しています。

2016年にTCCがドイツの流通大手企業のメトロ・グループから買収し、METROからMM MEGAへ名称変更しました。タイ本国のBIG CとベトナムのMM MEGAとの相互補完が進んでいます。

ややこしいのですが、ベトナムの「BIG C」はライバルのタイ財閥のセントラルグループが保有。

  • 南部:9店舗(ホーチミン:3店舗・ホーチミン近郊:6店舗)
  • 中部:4店舗
  • 北部:6店舗(ハノイ:3店舗・ハノイ近郊:3店舗)

※参照:http://mmvietnam.com

Vietnam_MM Mega Market_Thai TCC

ホーチミン市2区の”MM MEGA”の店内。ベトナムでは珍しい会員制。

「Saigon Beer」:ビール

ベトナム国営ビールメーカーのサイゴンビール(SABECO)が展開する「サイゴンビール」と「333(バーバーバー)」の2商品は同国ビール市場の40%を占有しています。

2017年にTCC傘下のタイ・ビバレッジのベトナム子会社であるベトナム・ビバレッジが、サイゴンビール(SABECO)の株式54%を約5,500億円で買収。当時は、ベトナム国営企業の民営化における最大案件として話題になりました。

ベトナムではアルコール飲料の94%がビールであり、今後は人口増加を背景に世界有数のビール消費国となる可能性がる有望な市場です。

※参照:VBA https://www.vba.com.vn/

Vietnam_SABECO_Beer Saigon_555

東南アジアのビール消費が停滞する中、ベトナムの”SABECO”社は大きく成長している。

「Tiger Beer」:ビール

シンガポールのフレイザー&ニーブ(F&N)が東南アジアで展開するビール「タイガー」は、ベトナムでもメジャー銘柄です。2013年にTCCグループのTCCアセッツが買収し、タイ企業傘下に入りました。

TCCは本国タイでは「Beer Chang」が競合の「LEO」とTOPシェアの奪い合いを続けています。その一方で、すでにベトナムで「サイゴンビール」と「タイガー」という二つのブランドを保有し、其の市場シェアは50%に達するほど、強力なプレゼンスを発揮しています。

Vietnam_F&N_Tiger Beer_ベトナム_フレイザー&ニーブ_タイガービール

シンガポール発のビールも、ベトナムなら缶1本あたり70円弱というから驚きだ。※2019年時点の小売店価格

「VINAMILK」:乳製品

ベトナムの乳製品業界の覇者ビナミルクは牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、果汁ジュース、豆乳、乳児及び高齢者向け粉ミルクを展開しており、圧倒的なブランド力を誇ります。

実は、同社の国内原乳調達率は3割にとどまり、多くを海外輸入に依存しており、調達コストの上昇から今後は国内生産に注力していきます。

TCCは傘下のフレイザー&ニーブ(F&N)を通じて、このビナミルクの株式を出資比率約17%を保有しています。

Vietnam_VinaMilk_ベトナム_ビナミルク

ベトナムのスーパーマーケットでは”VINAMILK”専門コーナーが必ず設置されており、その販売網は強力。

CP(チャロン・ポカパン)

CPはチャロン・ポカパンの頭文字を冠する、華僑系のタイ最大規模の財閥です。冷凍ブロイラー、冷凍エビなどの食品・アグリビジネスを主とし、其のほか「7-イレブン」などの小売業、「TRUE」などの通信業の3分野を展開しています。

特に、農業分野の旗艦企業であるチャロン・ポカパーン・フーズ(CPF)はタイのみならず世界でも存在感が大きな企業です

CPベトナム

チャロン・ポカパーン・フーズのベトナム子会社であるCPベトナムは、2019年末までに約340億円を投じて、ホーチミン市に新たな食品加工工場を建設します。そして、2020年にはそこから日本や欧州向けに鶏肉製品の輸出を開始する見込みです。

Vietnam_CP_ベトナム_チャルンポカパン

ベトナムのスーパーマーケットでも黄色と赤の”CPマーク”を見かける。

CENTRAL(セントラルグループ)

CENTRALはタイの華僑系大財閥で小売・流通分野の覇者です。

タイでは「Central World」などの商業不動産開発業、「Big C」などの小売業、「大戸屋」「吉野家」などの外食事業に加え、「B2B(本屋)」などの各種専門店、「Centara」ブランドのホテルなどを多岐に展開しています。

同社は2011年にベトナム市場に参入。今後も毎年約110億円を投じ、ショッピングセンターからファッション、家電用品など様々な分野の小売事業を拡大する予定です。

また、小売業に加えてダナンに四つ星リゾートホテル「Centara Sandy Beach Resort Danang」を経営しています。

「BIG C」:スーパーマーケット

BIG Cは2019年現在、ベトナムではセントラル・グループが合計36店舗を展開しています。

バンコクでお馴染みのBIG Cは元来タイ流通大手セントラルが設立しましたが、1997年のアジア通貨危機後で仏小売り大手カジノに保有株の大半を売却。その後、タイでは同社の競合である大手財閥TCC傘下の商社ベルリ・ユッカー(BJC)が2016年に「ビッグC」を仏小売り大手カジノから買収しています。

ベトナムでは2016年にセントラルが仏カジノから買収し今日に至ります。この時、日本のイオンも買収劇に参戦したがあえなく敗れています。

  • 南部:16店舗(ホーチミン:9店舗・ホーチミン近郊:7店舗)
  • 中部:5店舗
  • 北部:15店舗(ハノイ:6店舗・ハノイ近郊:9店舗)

※参照:https://bigc.vn/home.html

Vietnam_BIG C_ベトナム_ビッグC

ホーチミン市7区のCOSMOCITY内の”BIG C”。現地ではまだまだ存在感は薄い。

「Robins」:デパート

セントラルがタイで展開するロビンソン・デパートメント・ストア社(ROBINS)です。2014年にハノイとホーチミン市に2つのデパートを開業して以来、2店舗に止まっています。

ROBINSはベトナムでECのファッションストアを展開していましたが、不振に終わり2019年3月に閉鎖されました。

Vietnam_Crecentmall_Robins_ベトナム_クレセントモール_ロビンス

ホーチミン市の7区高級エリアのCRECENTMALL内の”ROBINS”は4フロアにまたがる大型店。

「Look Kool」:生活雑貨

Vietnam_LookKool_ベトナム_ルッククール

ベトナムでは”BIG C”内部に併設されているケースが多い。

「Nguyen Kim」:家電量販店

2015年に大手家電量販店グエンキムの株式49%を取得しています。

「Lan Chi Mart」:スーパーマーケット

ベトナムの地場スーパーチェーンの「Lan Chi」は、セントラル傘下のスーパーマーケット「Tops」と資本業務提携しています。現在25店舗を運営。

まとめ

今回は、タイ王国の大手財閥のTCC、CP、CENTRALの3社の隣国ベトナムの小売市場でのプレゼンスについて記しました。

今や、日頃手にしているアレもコレも、実はタイ資本の商品であり、今後もその影響力は確実に強くなっていきます。

タイを含めベトナムに進出している多くの外資系小売企業は、消費者に多様で高品質な商品を手頃な価格で供給しており、大きなメリットを提供しています。

一方で、ベトナムの生産者やサプライヤーは加熱する競争についていけていないです。ドイモイ政策によって、つい最近市場が開放されたにもかかわらず、結局は小売市場の50%超が既に外資系小売業者に占められています。

これら以外にも、ドンナイ省とビンホアで展開する「アマタ工業団地」、タイスキレストランの「MK Restaurants」、法人・個人の両事業を展開する「バンコク銀行」などタイ企業がベトナムへ進出しています。







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